常栄寺(ぼたもち寺)
常栄寺とは?|歴史や由来
常栄寺(じょうえいじ)は、17世紀初頭に創建された日蓮宗の寺院で、初代住職は日詔(にっしょう)上人、創建者は日祐(にちゆう)尼と伝えられています。鎌倉・由比ヶ浜のほど近くに位置しながらも、観光客の数は少なく、落ち着いた雰囲気の中でゆっくりと参拝できる穴場スポットです。
この寺は「ぼたもち寺」という愛称でも親しまれており、そこには日蓮宗の歴史に深く関わる、感動的な逸話が残されています。かつてこの地には、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝が海辺の景色を楽しむために設けた「桟敷(さじき)」と呼ばれる観覧所があり、そこに住んでいた「桟敷の尼(さじきのあま)」という女性が、常栄寺の伝承の主役となる人物です。
見どころ|景観・建築・自然・特徴など
常栄寺の境内はこぢんまりとしており、華美な装飾はありませんが、その分静寂と落ち着きに満ちた空間が広がっています。本堂には、日蓮宗の開祖・日蓮と、教えを継承した三人の高僧を象徴する「三宝祖師(さんぽうそし)」像が本尊として安置されています。
また、境内には「桟敷大明神」と呼ばれる小さな社もあり、地元の人々からは縁結びや家内安全の祈願所として親しまれています。木々の緑と石畳が美しいコントラストを描き、写真に収めたくなるような鎌倉らしい風情が魅力です。
ご利益・文化的意義
13世紀後期、日蓮(にちれん)は幕府に異端視され、処刑される危機に直面しました(これが「龍ノ口法難(たつのくちほうなん)」と呼ばれる事件です)。その際、「桟敷の尼(さじきのあま)」と呼ばれる女性が、日蓮に胡麻入りのぼた餅を献上したと伝えられています。
その後、日蓮が龍ノ口でまさに処刑されようとしたその時、江ノ島方面の空に光る物体が突如として現れました。この異変を目撃した役人たちは大いに驚き、恐れをなして処刑を中止したとされています。
この奇跡的な出来事が語り継がれる中で、桟敷の尼が捧げたぼた餅は「首つなぎぼたもち」と呼ばれるようになり、日蓮宗の信仰の象徴として今日まで人々に親しまれています。
名物・体験・グルメ
毎年9月12日に行われる「龍ノ口法難会」では、日蓮が法難に遭ったこの日を偲び、参拝者にぼた餅がふるまわれる「ぼたもち供養」が行われます。この供養に使用されるぼた餅は、当時と同じく胡麻入りで、素朴ながらも深い意味を持った特別なお菓子です。
この日は地元の人々や信者はもちろん、観光客にも開かれた日であり、伝統と味を通じて歴史に触れられる貴重な体験ができます。
おみくじ・御朱印・ユニークな風習
常栄寺では、日蓮宗特有の「御首題」を含む御朱印を授与しています。特に有名なのが、ぼたもち伝説にちなんだ和歌が記された御朱印です。その一節、
「これやこの法難の祖師に萩のもち ささげし尼が すみしところ」
は、桟敷の尼が日蓮に捧げたぼた餅を詠んだもので、御朱印の中に深い物語を宿しています。
御朱印は本堂右手の寺務所で授与され、インターホンを押して対応をお願いする形式です。対応時間は11時~12時、13時~15時に限られています。また、宗派によって授与の有無が異なる場合があるため、受付時に「日蓮宗かどうか」を確認されることもあります。
アクセスと開門時間
常栄寺は、鎌倉駅から徒歩約5分という立地にあり、アクセスも非常に良好です。駅からの道のりは平坦で、観光ルートにも自然に組み込めるのが魅力です。
トシズプレイスにご滞在の方であれば、朝の散歩がてら立ち寄ることもできます。キッチン付きの素泊まりスタイルだからこそ、朝の自由な時間を活かして、観光前にゆったりとお参りすることができます。
開門時間は9:00〜17:00。御朱印を希望する方は、授与時間が限られているため事前の確認がおすすめです。
おすすめの訪問時間・シーズン
常栄寺は年間を通して落ち着いた雰囲気が保たれており、特に混雑を気にせず訪れたい方におすすめのスポットです。中でも、秋の紅葉シーズンには境内の木々が美しく色づき、訪れる人に季節の移ろいを感じさせてくれます。
また、毎年9月12日の「龍ノ口法難会」は、ぼたもち供養の体験と共に伝統行事に参加できる貴重な機会です。朝の時間帯は特に人が少なく、静かな空気の中で心を落ち着けることができます。
トシズプレイス宿泊者の方は、朝食前の短時間でも訪れることができ、完全無人のスマートチェックイン・チェックアウトのシステムによって、自由なスケジュールで動けるのも嬉しいポイントです。
周辺スポット|徒歩圏内のスポットを中心に紹介
常栄寺の周辺には、鎌倉ならではの歴史と自然が感じられるスポットが点在しています。徒歩でアクセスできる由比ヶ浜海岸では、潮風に包まれながらリラックスしたひとときを過ごすことができます。
また、鶴岡八幡宮や小町通りも徒歩圏内にあり、参拝や買い物を楽しむルートにも組み込みやすい立地です。人通りの多い場所を避けたい方には、静かな常栄寺からスタートする散策ルートが特におすすめです。
こんな方におすすめ|目的・関心・滞在スタイル別に提案
- 歴史や宗教に興味がある方:日蓮と法難、ぼたもち伝説といった実話に基づいた信仰に触れられます
- 観光客の少ない場所で静かに過ごしたい方:落ち着いた環境で、ゆっくりとした時間を過ごせます
- 朝の時間を有効活用したい方:宿泊施設から徒歩圏内で、朝の参拝にも最適です
- 御朱印集めをしている方:和歌入りのユニークな御朱印が受け取れる、貴重なお寺です
まとめ|その場所の魅力と、トシズプレイス滞在中に楽しむ価値を締めくくる
常栄寺は、鎌倉の静かな一角に佇む、歴史と信仰が深く根づいた寺院です。「ぼたもち寺」という愛称の裏には、日蓮を救ったとされる女性の慈しみと、奇跡のような出来事が伝えられています。
華やかさこそありませんが、だからこそ味わえる落ち着きと趣。トシズプレイスに滞在中であれば、自由な朝の時間にふらりと立ち寄ることもでき、旅先での日常のような特別な時間を体験できます。
喧騒を離れた静けさの中に、鎌倉の歴史と優しさが息づいている――それが常栄寺の魅力です。